Benefit Realize(ベネフィットリアライズ)〜人を稼ぐ〜

Interview

「服」とは「着る建築」である。
授乳服から世の中の母親を救う女性社長の思いとは。

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そこには働く女性、出産、子育て、ひいてはすべての人へ通じる想いがあった。有限会社モーハウスは21年間授乳服の業界を切り開いてきた企業である。現在は授乳服の制作、販売に留まらない幅広いサービスを展開している。メディアや行政からも注目を集める「子連れ出勤」のパイオニアである代表にこれまでの想いを伺った。

今年で設立21年ですね。設立するきっかけというのは何だったのですか?  

光畑代表

21年前は私には2人の子供がいまして、下の子が生後1か月の頃でした。病院で検診を受けて、もう出かけていいですよ。と言われました。  家に1か月も居て、悶々とするところから、出かけていいですよと言われたので、嬉しくてすぐ出かけました。  つくばから東京まで出掛けた電車の中、子供が泣き出してしまったんです。 そこで大変だったという経験をして、これはどうにかできるのではと思ったんです。 

どんな経験だったのですか? 

光畑代表

当時は全然子供が電車に乗っていなくて、さらにベビーカーは禁止でした。  親は子供を連れて外に出かけるものではないという雰囲気の時代だったので、子供の泣き声ってすごく目立つんです。  今でもお母さん達はそういう場面で大変なのは変わらないですよね。 大人しか居ない電車の中で、しかも男性が多いという状況で泣かれたものですから、一生懸命あやしたりしたんですがやはり泣き止んではくれませんでした。

どうにかやりすごせないかと思ったのですが、とにかく声は大きくなるし、もう最終的にしかたがないって観念して授乳をしました。 電車中の人はこっちを見ているし、恥ずかしいのと、子育てってこんな思いをしないとできないのかと。でも、これはどうにかできるのではないかと思いました。

それはたしかに大変な状況ですね。 

光畑代表

当時、お母さん支援は市民レベルでしかやってないですから、だれかがやってくれるのを待つという発想はもともとないんですよ。  なのでまずは自分でできること、自分で、お母さん達がつかみとれる手段っていうのはなにかないかなって考えました。  授乳ができる「場所」を作るのは時間もかかるしお金もかかるけど、「服」だったら自分で買えるから、それがいいかなって思いつきました。 私はもともと建築雑誌の編集をやっていましたが、建築はつくるのに大きなお金がかかるし、その場に行かないといけないですけど、服というのは着て歩ける建築ではないか、じゃあ服で解決しようと考えたのが最初です。 

一番最初は自分で作り始めたとのことですが、こだわりやコンセプトというのはなんでしょうか?

光畑代表

まずは、「胸もお腹も見えない」ということです。  さらに電車の中での体験があるので「肌が見えない」プラス「一秒か二秒であげられないといけない」というところです。  私の電車での体験の敗因は子供を泣かせ続けたこと。 その間に皆の注目を浴びるし、子供も辛くなるので、そのスピード感は大事だと思いました。  

あともう一つ言えば、これを見てください。

光畑代表

これ授乳しているところですが、授乳中だと分からなくないですか? 

抱っこしてるようにしか見えない。

光畑代表

授乳しているというのが分かるだけでも抵抗がある人はいるので、「分からない」というところにもこだわりました。

お子さんが生まれて、お仕事されている方も多くいらっしゃいますが、「子連れ出勤」というのを最初に始めたのは社長のアイディアから? 

光畑代表

アイディアというよりは、自然な流れなんです。当時は子供が生まれた後も、出版社の仕事も並行してやっていました。  でも、結局出版社に行くときは子供を預けなきゃいけないんですよ。  さらに家で編集をしているときも、子供がいるとなかなかできないので、子供が寝ている間にやったりしていました。  ところがモーハウスのこの仕事は、子供がいてもまったく問題なかったんです。  子供がいながら作ったり、お客さんに説明したり、発送をしたり。 

そうしているうちに、同じように子供がいる方々が手伝いたいと集まってきました。  私も子供を連れているし、同じようにどうぞ手伝いにも連れてきてくださいってやってるうちに当たり前になっていきました。

子連れ出勤で大変だったことはなんですか?  

光畑代表

お手本はないので、最初は分からなくって子供がけっこう大きくなっても連れてきていました。  3歳ぐらいの子が2,3人くると騒いでしまいますよね。  外に遊びに出たなと思ったら、お隣の家の苗を抜いてきちゃって、菓子折りを持って謝りに行ったり。  また、事務所で商品を発送していたので、お客様から、おもちゃが入っていましたよとか。    

赤ちゃんは一緒にいてもなんの問題もないけど、大きい子の場合は考えないといけないなとか、そういう事がだんだん分かっていきました。  

産休育休を取ってからって考える人が多いので、やれない人っていうのも多いと思うのですが、、、 

光畑代表

おっしゃる通り、そう思っている人がいかに多いのかということ。  私も子供が生まれたら社会的な意味で人生終わりだって思っていました。  それまで働いていたときは夜中まで仕事をすることだってありました。  でも子供生まれた女性がそれをできるわけがないですよね。  ですが、全然そんなことないという事が分かったんです。  子供を産む前の、独身の自分に、こういう働き方ができてしまうというのを教えてあげたいです。  若い人に教えてあげたら、将来のイメージが全然違うと思います。  

ですので、子連れ出勤について日経新聞が最初に全国版に大きく載せるとなったときに、これは情報としての価値があるんだなと思いました。  これを知っているだけで、お母さんや若い人など、気持ちが変わる人がいるはずだから。  だから、この働き方は見せていこうと思い、続けてきました。

授乳服についてですが、他社のものとここが違うというところを教えてください。

光畑代表

私たちが始めたときは、まだ授乳服というものは日本にありませんでした。  「服にちょっと穴開けた」、「ボタンでとめた」という程度のものしか。  私としては、「見えない」、「バレない」のが授乳服であると思ったんです。  しかしマーケットが広がっていくと、デザインをこだわりたいと考えますよね。  でもデザインがすっきりしていて、しかも「肌が見えない」という作りはすごく難しいんです。  そうすると上からなにか掛けて隠せばいいとか、授乳服の機能としては胸を出すということだけでいいとか、継ぎ合わせて簡単に作るとか、作るのが楽なものが世の中には増えてしまいました。

もちろん中には使いやすい授乳服も世の中に出ていると思いますが、使いづらい授乳服に当たってしまって授乳服は役に立たない、と思ってしまうのは残念ですね。  先日京都からいらしたお客様が、「通販だと着て試せないので、失敗がない授乳服としてモーハウスさんは有名です」と教えて下さいました。ありがたいですね。さらにモーハウスはボタンを禁止にしているんです。 赤ちゃんが飲んじゃうと危ないですし、1秒2秒で授乳しないといけないのでボタンを開けている時間もないですよね。 また、ボタンの閉め忘れなんかも絶対なくしたいですし。

女性じゃないと絶対に気づけないところですね。

光畑代表

はい、マニアックにやっています笑

つくりもとてもおしゃれですよね。

光畑代表

おしゃれを追求するならば、もっとおしゃれにもできるのですが、その結果使いづらいと意味のないことなので、使いやすさがあり、その上でのデザインだと考えています。

これから赤ちゃんが生まれる方へのプレゼントにもいいですね。

光畑代表

ぜひ生まれる前にプレゼントしてください。

生まれる前なんですね。

光畑代表

生まれるときに授乳服を持っていないと病院で苦労したりするんです。 持っていると全然違うんですよ。いわゆるベビーシャワーみたいな、産前のプレゼントに喜ばれます。赤ちゃんが生まれる女性社員に企業の社長からプレゼントをするっていう会社もあります。復帰率があがると言っていました。

社員の方は女性の方がほとんどですか? 

光畑代表

ほとんど女性で、一部男性が週に何回か来たりします。 子連れ出勤をしているスタッフはもちろん授乳okで、むしろ授乳をなんでしないの?ってくらい。  子供が泣く前にあげましょうがルールなので。  だからといって男性がいたら全然できないかっていうとそんなことは全くないんです。  

今も全然子供の泣き声は聞こえないでしょ?

聞こえないですね。

光畑代表

そうなんですよ。ここで働くことで、子育ても上手くなるのだと思います。 

働きたいと思う女性も多いのではないですか?

光畑代表

それがそんなこともないんですよ。  やっぱり保育園に預けたほうが楽だって思っている人が多いみたいです。  でも本当は赤ちゃんの時にこういう働き方を少しでも経験していると職場復帰がすごくスムーズなんです。  服だけあればできますし、子供にとってもいいことなので、本当はもっと色々なところで増えればいいのになって。 

それができるのはすごいですよね。  社員様は今何人ぐらいいらっしゃるのですか?

光畑代表

アルバイトも入れて40人ちょっとくらいです。社員が14人ぐらいです。 

創業メンバーは?  

光畑代表

創業メンバーは今でもいます。新しい人もいます。  でも子連れのスタッフは入れ替わりが多いです。  子供を連れてくることができる時期はそんなに長くないですから。  入れ替わりますけど、生まれましたって戻ってきたりということもあります。 

生まれて戻ってくるというのは珍しいですよね。

光畑代表

そうなんです。逆なんです。  赤ちゃんできたから辞めますではなくて、赤ちゃんできたから働きたいですって。 

そういう環境はなかなかないですよね。社内の様子はいかがでしょうか? 

光畑代表

話し合いの場はもちろんあります。 食事会は皆さん子供もいますし、家庭もあるのでそこを合わせるのはなかなか大変なんですけど、それでも年に数回は行っています。

社長のそのお考えがすでに大きな福利厚生だと思いますが、会社で取り組んでいる福利厚生のようなものもある?

光畑代表

「子連れで働いてもいいですよ」というのがやはり一番大きいですね。  また、働き方に関しては結構柔軟です。 子供ができたり、介護があったり、生活の状況は変わるので、できるだけ合わせる働き方をしていくようにしています。

すばらしいですね。最高の福利厚生ですね。

光畑代表

転職してくる人も給料ではなく、子供のために我慢をしなきゃいけないとか、子供の具合が悪い時になかなか行けないっていうようなことがないだとか、そういう部分に関して気兼ねないというところにすごく魅力を感じるっていうふうに言ってくれるんです。 

女性は子供が生まれてからも大変だったりというのも聞いたりしますが、、、 

光畑代表

子供が生まれるというのはすごく幸運な事だと思うので、仕事だったり、話す相手がいないとかだったり、悩んでほしくないんです。  でもそれは変えられると思いました。

お母さんからしたら、一人じゃないというのもいいですよね。「助け合える」環境は最高なのかなと。 

光畑代表

まさにそこだと思います。  「お母さんが孤立しちゃう」、「子育て大変」いうイメージがあると、産みたくないですし、なかなかできないですよね。  だからモーハウスに来ると子供ができやすいって言われているのはそこだと思うんです。  不安がなくなるのだと思います。 

男性からの評判はどうですか?

光畑代表

男性からの評判もとてもいいです。  例えば夫婦関係において、夫だけに批判がいってしまうというのも気の毒だと思うんです。

いちいち料理を「手伝う」って言っただけで怒られますよね。お母さんが、孤立していることが、すべての根っこだと思います。 今まで普通に仕事していたり、色々な人と会っていたのに、それが全部できなくなるので、目の前に言葉も喋れない子供だけを相手にしているってやはりきついわけですよ。  こういう穴に落ちてしまっている人には何をやってあげても苦しいので、まず穴から出してあげましょうと。  

だから、どこか出かける機会をつくって、一緒に出かけてあげる。  そこで、授乳服のプレゼントは非常に有効ですと(笑)  そうすれば夫も授乳室の前でずっと待たなくていいし、簡単にお出かけができる自信がつけば、勝手に奥さんは元気になれて、普通の会話ができる。  帰ったあとのカウンセリングはいりません。 

最後に、光畑社長の「夢」を教えてください。

光畑代表

私たちは大きな意味で言うと女性支援の会社なんですけど、子供を産んでる人も産んでない人も男の人も女の人も、みんなが我慢しないで楽して幸せに暮らせるといいなと思っています。  ものを選ぶときに、社会に、ひいては地球に良いものを選べたらいいけど、それを選んだときに我慢して選ぶというのは嫌ですよね。  自分が「やりたいこと」とか「欲しいもの」を選んだ結果、いいことになるのが一番いいと思うんです。  楽して楽しく、暮らせるといいなっていうのはすごく大きいです。  仕事に置き換えると、もしかすると働き方もそうかもしれない。  要はもともと自分のために子連れで働けるという環境を考えたのに、実は他の人にとっても働きやすい環境ができているのかもしれないので。  

それはお母さんだけじゃなく、実はお父さんが助かるとか。 なんかもっと他の人が楽になっていったり、幸せになっていくといいかなと。