時代の流れとともに変革すべきものと残すべきもの。会社を支える理念とは。
「製造業はお客様のニーズに対応さえできれば時代についていける」と語る沢井代表。今年代表に就任したばかりであるためか、今でもあだ名は前役職の「部長」だという。代表にも気軽に意見を言える社員との関係に秘められた想いとは。創業73 周年目を迎え、なお躍進を続ける同社の理念を、創業者の子息であり、3 代目社長である沢井勉氏へのインタビューを通じ、掘り下げていく。
-
御社は今年で創業 73 周年目に入るとお伺いしました。代表に就任されたのはいつ頃からになりますか?
-
2018 年8 月1 日からです。
祖父が戦後まもなく会社を設立し、私で3 代目になります。
それまでは部長職に就いていたため、代表に就任した後もたまに「部長」と呼ばれます(笑)今ではあだ名みたいなものです。
-
実際に部長から代表に変わり不安もあったかと思いますが、ご自身の中で気持ちの変化はありましたか?
-
部長のときは生産管理を担当していて「納期重視」でやっていたのですが、代表になった今は「利益を出すこと」を 1 番に考えるようになりました。
利益を出せないと社員への給料が払えないため、「利益を出す」ために何をするかという事
を1 番に考えています。
-
では以前から比べると、会社として業務内容など変化してきたものはありますか?
-
15 年ほど前までは大量生産していればいいという時代でしたが、量産品は全部海外にも ってかれています。そのため、特化するものや付加価値があるもの、1 個から製造するという事ができないと、お客様にとっても日本でやる意味がないのではと思っています。
ただ、製造業に関しては、お客様のご要望に対応さえできれば時代についていけると考えています。
-
なるほど。時代の流れに合わせて変化しているという事でしょうか。さらに何か新しい事を始められたそうですね。
-
毎年何か 1 つ、今までやってこなかった事をやろうと考えていて、はじめは ISO を取ったり生産管理システムを導入したりしていました。
最近では、国の実習生制度を利用してベトナム人の採用をおこないました。
これは会社の展望にも繋がるのですが、実は材料のほとんどをベトナムから仕入れている事もあり、将来的にベトナムに工場を建てたいと考えています。
実習生制度では最長 5 年間日本で働く事ができます。日本での実習が終了しベトナムに帰った際、ベトナムに工場があれば働く事ができますし、日本での経験を積んだ社員がベトナムで教えてくれる立場になれば、私たちも安心して任せられます。
ベトナムの工場で完成まではいかなくても途中加工までできれば、と思っています。
-
代表自身も会社も日々変化していくなかで、変わらず大切にしている事は何ですか?
-
先代から守ってきた「信用・信頼」ですね。
「お客様への信用・信頼」「ともに働く人々への信用・信頼」「社会への信用・信頼」
この3 つは大切にしています。
-
「ともに働く人々への信用・信頼」とありましたが、代表は月に 1 回社員の方と飲みに行かれるとか。
-
はい、月に 1 回若い社員を連れて飲みに行っています。普段言えない本音を直接言ってもらう機会にしていますね。
「企業は人なり」という言葉の通り、社員にはとても感謝しています。
実は私がこの会社で働き始めたとき1 週間で抜け出した事がありました(笑)
ですが、今一緒に働いている社員はいつも一生懸命にやっていて、辞める人もいません。本当に尊敬していますよ。
-
その代表の社員に対する想いが福利厚生にも繋がっているのですね。
-
そうですね。
暑気払いや忘年会は毎年開催しますし、日頃工場が忙しく休みが取れない事もあるため、その分ゴールデンウィークやお盆、年末年始の長期休暇は取ってもらうようにしています。先ほどベトナムでの採用活動の話をしましたが、今は募集をかけても人材が来ないのが現状です。ですので、今いる社員のためにも新しく入ってくる社員のためにも、福利厚生面では充実していきたいと考えています。
-
それでは最後にお聞きします。代表の夢は何でしょうか?
-
従業員が夢や希望を持てる会社にする事です。
毎年給料を確実にアップしていくなど、若い社員には絶対に夢・希望を持ってほしいと思っています。そのためにはどんどん変革していかなくてはいけないと常日頃から思っています。
来年には今建っている工場の隣の土地を買収して、新しい工場を建てる予定です。
新しい工場では今の世の中の大量生産の流れとは別に、今までとは違うような、1 個ものや特別なものを一手に引き受ける事ができるような工場にしていきたいと考えています。