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Interview

「技術は全部持っていけ」。 農業に志を立てる若者に胸を貸す農業法人経営者。

農業をやりたい若者が増えている。茨城県にある有限会社大地でも、地元出身者より、都市部から農業を志してやってきた社員のほうが多いという。彼らを受け入れるためのカギの一つが、農業の6次産業化。トマトとイチゴ、2つの作物を起点に、他の生産農家も巻き込んで県の農業を活性化させる、その取り組みとは。

――生産農家として50年、農業法人にされてからも20年以上の歴史があるそうですね。

吉原

はい。平成24年からは国認定の6次産業化推進法人としても続けています。現在はこの直売所と、トマトを栽培する石下農場、イチゴを栽培する下妻農場の3ヵ所を運営しています。

――生産者様とのつながりも多そうですが。

吉原

おかげさまで、いろんな作物の登録農家さんに出品していただいています。一般市場に出すのとちがい、直売所は品物が並ばないことには始まりませんから、ありがたいです。

――以前は御社も、トマトやイチゴを一般市場に出していた?

吉原

出していました。ある意味「出せば終わり」だった当時と比べると、生産者として顔も名前も出る今のほうが張り合いがあります。また、加工して売ることができるようになってからは通年で収益が上げられますので、事業としての手応えも大きいです。

――通年で、とは、具体的には?

吉原

生で売る以外に、旬の時期に冷凍保存しておいて、たとえばイチゴなら夏場にアイスにして出すとか、トマトをジュースにして出すとか。収穫期でなくても売れる商品があるというのが大きいんですよ。

――2014年のグッドデザイン賞を受賞した商品もあるそうですね?

吉原

「大地のミニトマトジュース Sun Pallet」です。赤、橙、黄、緑、紫とそれぞれ色の違う5品種のミニトマトから作りました。無塩・無添加・無着色でトマト本来のおいしさが味わえますよ。同じくトマトジュースの「大地からのご褒美」も好評で、2013年に県の農産加工品コンクールで優秀賞を受賞しています。

大地のミニトマトジュース Sun Pallet

大地のミニトマトジュース Sun Pallet

大地からのご褒美

大地からのご褒美

――いずれも、栽培から加工まで自社でされている?

吉原

はい。品質管理がしっかりできますので、「安心・安全面でも信頼できる」と好評です。

――法人化してからは社員も雇用されていると思います。社内の雰囲気は?

吉原

明るいですよ。20代から30代の若い社員が多いですし、みんな農業が好きですから。じつは地元の子よりも、県外から来た子のほうが多いです。ホームページを見て印象が良かったからというので電話をくれて、兵庫県から移ってきて働いている女の子もいます。わりとお嬢様大学の出身じゃないかと思うんですが、石下農場の近くに自分でアパートを借りてね。今、トマトづくりをしていますよ。

――そんな皆さんに対し、どんな思いを持っていますか?

吉原

農業を学んで農家で独立したい子と、農業法人で働いていたい子と両方いますが、いずれにも、教えられることは全部教えてあげたいと思っています。せっかく「農業が好き」という共通項で仲間になったんだから、一緒にがんばっていきたいですよね。

――今後の展望に向けて課題を。

吉原

生産農家としては収量を上げること。農業法人としては、たとえば、今は別々にある直売所と農場2ヵ所を集約して、何か利益が出ることを始めたいです。また、県内の他の農家さんから作物をジュースにして売るご相談をたくさん受けていますから、それに応える体制づくりも課題です。トマトジュースを使ったレシピ集をつくって、商品の箱に入れるようにする話も進んでいます。そうやって新しいことに取り組みながら、みんなで農業を盛り立てていきます。