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Interview

創業以来離職率0%。社員のアイデンティティを引き出す人材活用とは。

企業の根幹をなすシステム構築および保守という世界において、卓越した技術と社員個々の人間力を武器にIT代行業務を拡張し続けている株式会社エージェント・スミス。同社を率いる山菅利彦氏に、クライアントのメリットと社員のメリットを合致させる、人材活用術および意識向上のポイントを聞いた。

――2009年に株式会社エージェント・スミスを立ち上げて、今期で7期目。人材もかなり揃ったと聞きましたが?

山菅

そうですね。当社の考えとしては、人材ありき。お客様の幅を広げていくためには人材を採用しないことには広がりません。
ただし、スキルはかなり問います。当社はエンタープライズ系といわれる大規模システムのサポート事業を核にしていますから、大規模構築のプロセスやフローを知っておかなくてはいけない。

世の中では大規模と小規模、それぞれ専門領域を区切って自社ブランドとすることもありますが、大規模でやってきた人は小規模もできます。でもその逆は難しい。そういう意味ではスペックの高い人材を着実に広げられていると自負しています。

――高い技術を備える人材を集めていくのは、それだけでも大変なのでは?

山菅

実は大変です。業務の相談を受けるとき、的確に人材を提供できない苦労の時期もありましたから。
「このレベルに達した人材が数名いれば提案できるのに」と、あと一歩のところで涙をのんで辞退したこともあります。

――高い技術者がそろったことで、どんなことが具現化しましたか?

山菅

お客様のご要望に応える守備範囲が広がったことによって、顧客数が増加したのがまず第一。次に、自分たちのスタイルを確実にお客様にご理解いただけるようになりました。

ITベンダーが売りたいものと、お客様の欲しいものが一致しないとき、ベンダーは一見マッチしているように見せかけながら売っていくことが業界的に少なくありません。でも私はそれをしたくないんですよ。お客様の現場に行って、何が足りないかを判断し、足りないところだけを提案する。
そういうこだわりを持つ事が、自社ブランドを保持する上で大事なこと。

優秀な人材がそろっていることは受注量の低減不安が薄まるわけですから、理想を具現化しやすいのです。

――別の言い方をすれば、それが御社のミッションでもありますよね。

山菅

おっしゃるとおりです、業界の悪癖は少しでも改善していくことで、業界に寄与したい思いはあります。でもそれ以前に、お客様のご信頼を確実に得られると付き合いが長くなります。 

時間をかけてお付き合いしていくと、私たちがどのようなモチベーションで取り組んでいるのかがご理解いただける。そのつながり方こそが、社員たちのモチベーションやアイデンティティをさらに高めることにもつながっていくと考えているんです。

――7年目以降のステップではそこが発展のカギになりそうですね?

山菅

お客様の組織内にて、代行・代理人としてのカバレッジ(守備範囲)を広げることで、情報システム部門の負荷を軽減できます。お客様の情報システム組織や人材には根が深い問題があります。

例えば、IT部門に社員の方が専属的に配置され、かつそれが長期間になると、彼らが本来の目的であった業務に従事できないことになる。するとその本人のモチベーション低下が起こり得ます。それをコントロールするのはすごく大変なことなので、外部委託したほうが実は四方丸く収まることの方が多いです。

 企業の根幹をなす情報システムを任せていただくわけですから、長くお付き合いできる体制と人材が当社にも必要です。そして社員たちのモチベーション管理も必要なのです。

――どのような点でそのモチベーションを高めていますか?

山菅

大きいのは評価制度でしょう。当社は多面評価を採用しており、自分と上司の評価が6割、同僚が2割、お客様が2割という比率で約30項目にわたり評価しています。また給与も同業他社と比較すると大手並みだと思います。

できる人を採用するにはそれなりの門戸を構えておかなくてはいけないですからね。また給与面ではサービス残業一切なし。残業自体も平均10時間を切っていると思います。ほかにも福利厚生面でのメリットは考え続けていますが、大事なのはこの二軸ではないかと思います。

これがエンジニアやコンサルタントとしてのプライドを育て、モチベーションを喚起する直接的な方法でしょうね。

創業以来、離職率ゼロ……つまり、未だに退社した社員がひとりもいないという驚異的な事実が、山菅氏の言葉に真実味を持たせる。「真似されたら認められたことになるので、いつ真似されるか周囲を見渡しています」という言葉の裏に確固たる自信が見て取れた。