Benefit Realize(ベネフィットリアライズ)〜茨城県の魅力を発信するウェブマガジン〜

Interview

今こそ【FUN to CHALLENGE】!
世界に学び、社会に貢献するイノベーションを創造する。

img_interviewMain_664-300_23_2

時代は第4次産業革命、少々他国に遅れをとり、あまり元気がない日本ではあるが、グローバル化や人工知能(AI)社会、人生100年時代などと言われ、世界は大変革の真っ只中である。国内では少子高齢化の急速な進行など課題は山積、今後あらゆる分野で世界に通用する理工系人材の需要は高まるばかりだろう。かような中、日本サポートシステム株式会社は、茨城県を拠点とし、デジタル生産技術を強みとしてFA機器、電子機器、FPC機器、ロボット機器の開発、工場の生産システムの開発設計から製作までを一貫工程の“ものづくり”で行っており、その技術力の高さは、そうそうたる取引先をみれば一目瞭然だ。注目すべきは人手不足とは無縁の優秀で豊富な人材だ。ロボットシステムシステムインテグレーターとして世界に通用する優秀な人材を獲得するポイントとは?代表に話を伺った。

現在5社の代表を兼任していらっしゃるとお聞きしましたが。

天野代表

元々は、キーエンスというセンサーの会社に18年勤めておりました。日本サポートシステム株式会社は当時の顧客の一社でした。

2009年に退職し、2010年から独立をして、いくつかの会社を手掛け、現在も代表を3社ほど兼任していますが、日本サポートシステム株式会社は、ちょうど去年の1月ぐらいに創業者の方から「社長を探しているがやってみないか?」とのお話を頂き、「是非、やらせて頂きます」という返事をさせて頂きました。

その際に、株式取得をし、オーナー社長という形で現在、経営に携わらせて頂いております。

まだ就任されて7ヶ月とお伺いしておりますが、代表になられた感想はいかがでしょうか?

天野代表

すばらしいです!チームのメンバーは、本当にポテンシャルが高く、やる気もあります。

手前みそですが、県内でも有数のロボットシステムインテグレーターと自負しています。
大きなチャレンジとして、「自分達の技術=ロボットを始めとする産業用制御機器の組みあわせ技術」を必要としている新規の取引企業様をたくさん開拓すると決めました!

日本はもとより、アジアを中心としたグローバルにもどんどん提供して行きたいと思っています。

一言では難しいと思いますが、あえて言うならば、御社の強みとは何でしょうか?

天野代表

良い工場と一言でいうのは難しく、工場ごとにあるべき目標は違います。

例えば2年前ドイツのBMWグループに視察に行った時の話ですが、イギリスにある同社傘下のロールスロイス、ベントレーの工場では、顧客が仕様を細かく注文するので、11台オーダーメイド的に作れることが良い工場の条件です。一方同じBMWグループでも小型車の生産工場においてはオートメーション化により多くの台数を生産することが良い工場となります。

それぞれの工場が目標とする全体最適=グランドデザインを提案できる点が弊社の一番の強みだと考えています。これからの時代の工場は多品種少量生産、納期の最適化、人手不足の克服と今まで以上に難しい課題解決を求められています。そこでは、本当の意味での生産技術提案と工場全体の最適提案というものが、ものすごく必要とされています。

一般的な自動化設備導入依頼の場合、お客様から仕様書をもらい、それを形にして納めるのですが、出来上がったものをお見せしてから購入を決めて頂く事はできません。その為、デジタルツインというサイバー空間内に、フィジカル空間の環境を再現する技術を使用し、まずは生産性成立検証から作り始めます。

その後、自動化装置やロボットを組み合わせつつ、様々な技術の積み上げを提示しながら作っていきます。例えば、注文住宅を連想してみてください。普通はモデルルームやモデルハウスを作ると目に見えて分かりやすいと思います。

しかし、我々の場合、1つ1つ案件により仕様も異なるので、ONE by ONE(ワン・バイ・ ワン)で作れるように、デジタルシミュレーターを使用しリアルな工場と自動化設備を再現しています。このデジタル生産技術=デジタルツインが我々の強みであり、我々のチームにしかない技術です。

先程から気になっていたのですが、今、代表が着られているジャンパーの背中に書かれている「TEAM CROSS FA」とは、御社のチーム名か何かでしょうか?

天野代表

これは、弊社やパートナー企業5社が連携で行っているチームのチーム名となります。一番のパートナーであるオフィス=エフエイ・コムという会社は、2018 10 月に行われた、 世界ワールドロボットサミット=WRSで世界第3位になった会社です。技術力に定評のある素晴らしい会社です。

TEAM CROSS FA」のメンバーは現在450名程で、海外のエンジニアも80名程います。自分で言うのもなんですが、恐らく日本のこの業界では上位を狙えるのでないかと思っています。先程の話にも繋がりますが、現在、「TEAM CROSS FA」の主要企業3社で「スマラボ」と名付けた産業用ロボット・IOTを体感体験できる展示場を運営しています。最新の産業用ロボットは国内外で約10メーカー、また最新の3D画像処理カメラでも国内外で約10メーカーを業界ごとのゾーンに分けてわかりやすく展示しています。お客様の要望に対して最新機器をテストしながらリアルな提案をすることが可能です。もちろん組み合わせが本当にベストかどうかの多くの知見も持っています。

私たちにご要望だけ仰って頂ければ、ロボットや周辺機器は我々が選んで、最適な組み合わせにて提案を行います。本来全部買えば約10億円かかってしまうので1社ですべて揃えるのは大変です。しかしチームを組む事で、「スマラボ」の運営が可能となりました。もちろん、スポンサー企業様にも4社ぐらい入って頂き、経産省様からの補助金など多くの力もお借りしています。

福利厚生も充実されているとお聞きしましたが。

天野代表

最近では、100名を超える新年会を茨城県の土浦市で行いました。この会場は、結婚式場だったので大きなプロジェクターがあり、音響効果も良くて盛り上がりました。 新年会の他にも、取り入れたものは多くあります。例えば、チームや部署を新規設置し、ジョブグレード(職務等級制度)を導入しました。ワンチーム制や工程管理チーム、ソフトの1本化など、社員がよりスムーズに作業ができるように様々な改善をはかっています。

もちろん、労働時間の見直しや、労働環境の改善も実施しています。自慢したいのは、出産お祝い金についてです。10万~最大300万円のお祝い金が貰えます。このように出産お祝い金もボーンッ!とアップしたので、会社が楽しくなっていると思います。定年もほぼ無くしています。

JSSメンバー

JSSメンバー

食事会などは定期的にされていらっしゃいますか?

天野代表

ランチミーティングを10名程で定期的に順番に実施しています。趣味の話や、その際に話して初めて知る事もあります。例えば、配線をやっている女性社員さんがカメラ好きだという事がわかり、それ以降は彼女にいろんな仕事の写真をお願いするようになりました。案外とご飯を食べながら話してみると知らない事があり、かつ多くの発見がありました。

御社は、人手不足とは無縁の優秀で豊富な人材がいらっしゃると聞き及んでいます。また、人材採用もどんどん積極的にされているとお伺いしましたが。

天野代表

昨年8月から10数名の採用を行いましたが、今後の日本での雇用は、年間30名程は採用していきたいと思っています。その為求人フェアなどには積極的に参加しており、近々ベトナムに行く予定です。先程、お話にありました「TEAM CROSS FA」では、2 年前から海外のメンバーを多く採用しており、ベトナム、ミャンマー、タイ、中国など2018年度は46名を採用予定ののち、40名の内定を出しています。今後海外雇用も、4050名ずつメンバーを増やしていく予定ですので、チーム全体として見れば、さらにおもしろくなると思います。

海外の人材を雇用されていかがですか?よく必死さが違うと耳にしますが、実際にそうですか?

天野代表

必死ですね。めちゃくちゃ良いメンバーばかりですよ。ハートが温かいですね。

背負っているものが違うでしょうね。実際、どうなんでしょう?日本に仕事を求める人材は、いわゆる苦学生が多いのでしょうか?

天野代表

実は、半分が苦学生で、半分が大金持ちの学生さんです。後者に至っては、日本ではめったにお目にかかれない、お金持ちです。それこそ、ミャンマーのお金持ちの子達は新作のゲームが発売されると、わざわざそれだけを買いに日本に来るくらいです。片や、前者は村を代表するような優秀な頭脳を持った苦学生です。

なので、地頭がめちゃくちゃ良く、英語はもとより、日本語もすぐに上達してしまいます。「日本のエンジニアに英語を覚えてもらうほうが良いか」「海外のエンジニアに日本語と技術を覚えてもらうほうが良いか」どちらが難易度が低いかと問えば、後者のほうかもしれません。一方でもちろん日本人も、どんどん雇用していきます。海外の人材のまっすぐで、努力をいとわない子達と一緒に仕事をする事で、刺激が連鎖します。「一生懸命やろう」とか「前向きに取り組みなさい」 なんて言わなくても、刺激があって楽しい職場ができれば自然と仕事が好きになり盛り上がると信じています。

私と同年代の方々にも、「最近の若者は」みたいな事を話す方もいらっしゃいますが、私は全然そんなことはないと思っています。むしろ我々が刺激を与えられていないだけだと考えます。

今後もJSSは、「TEAM CROSS FA」を通じて魅力的なメンバーを育成し、人間力を売りにして行きたいと思っております。

ミヤンマーのスタッフと

ミヤンマーのスタッフと

御社で働かれているスタッフの皆さんへの思いや、伝えたい事があれば教えてください。

天野代表

社是にもありますが、「とにかく楽しく働こう。楽しいのが1番! 会社は大人の遊び場だから、遊びつくしなさい!【FUN to CHALLENGE】」と常に言っています。【FUN to CHALLENGE】とは、「とにかく失敗してもいいから、チャレンジしよう、チャレンジしなければ失敗も何も生まれない」という思いから来ています。

弊社のメンバーには、チャレンジする事を恐れず楽しんでほしいと思っています。またランチミーティングなどを通して、私が意識して話をしている事としては、「世界が今どうなっているか?」という事です。世界がどうなっているかの中にアジアがあり、またその中に日本があります。こういうグローバルでの潮流に産業の中枢があり、そこに弊社が存在していることをしっかり意識し、今ある問題に挑戦する事が大切だと思っています。

代表の大切にしている言葉や思い、仕事へのルールなどがあれば教えてください。

天野代表

常に意識している言葉でかつ私の信条は【全速前進-Full Steam Ahead-】です。

また、メンバーに常に伝えているのは【FUN to CHALLENGE】です。

とにかく何か聞かれたら難しいと言わずに、簡単だと答えるようにしています。もし難しいと答えてしまったら、難しい理由を証明しなければなりません。しかし、簡単だと答えれば、簡単な事だと証明するだけでいいので、私は簡単だと答えています。

だから第一声は「難しい」とか「大変」とは言わないように意識しています。「調子はどうですか?」と聞かれたら、「絶好調です!」と答えています。また「これは難しいでしょ?」と聞かれたら、「いや、簡単ですよ」と答えて、話している間に一生懸命考えるようにしています。

学生に向けてのセミナーなども、積極的に参加されているとお伺いしましたが。

天野代表

きっかけは、教壇で理系の学生さん達の前で話をさせて頂いたことがあり、そこで我々の業界が学生さんに認知されていないという現実に気付かされたことです。知ってもらえれば、面白い業界なのに、認知がないのはもったいないとその際に思いました。
また、いざ学生さんと話をしてみると必ずと言っていいほど、社会人になりたくないという話が出てきます。

理系の学生さんに、この先どうしたい?と質問したら、学生さんの多くが顔を曇らせることに気付きました。私はそんな学生さんに「自由に選択でき、意思決定できる社会人は、今よりすごく楽しいよ」ということを常に伝えています。そうすることで社会人になる喜びを、少しずつ見出して欲しいと思っています。

確かに、海外に強い人材はどこも足りていないですよね。いつの時代も人材争奪戦という感がします。

天野代表

お金の特性として、「投資なくしてリターンはない」と私は強く伝えたいと思っております。その投資はビットコインや株の売買ではなく、自分自身への投資を最も優先していくべきだと思っています。

ですが、今の日本は自分に投資していない方が多いと思います。例えば読書の習慣がないことや、疑問に思っても現地の視察に行かないことです。海外採用においてもいくら私がグローバルやASEANだと伝えても、タイに行ったことがない方からしたら、興味を持てるわけがありません。興味を持てる国を見つけたら仕事だけではなくプライベートであっても何度も訪れ、ビジネスも挑戦し、そこで初めてその国の可能性について感じることができます。

経験にまさるものはないので、学生の時から自分に投資する習慣を身につけるべきだと思います。学生のうちに海外に留学する等の経験は将来に役立ちます。また海外に限らずですが自分自身に投資した経験や知識は必ず社会人になってからも役に立ち、仕事に活かせます。すると10年単位で見れば年収が上がるというリターンで返ってくると確信しています。

有難うございました。最後に、今後の目標や計画などをお聞かせください。

天野代表

まず中期目標としては、アジアで1千名のロボットシステムインテグレーターによる技術者チームを作る事を見据えています。日本初のラインビルダーを目指します。また、長期目標では「スマートファクトリー大学」を日本に作りたいと思っています。

理由としては、第一次産業革命がイギリスで起こり、国に大きな繁栄をもたらしました。

しかしながら残念な事にイギリスではものづくりの文化は残りませんでした。次に、このバトンを受け取ったアメリカでの第二次産業革命は、ベルトコンベアで自動車の大量生産に成功しました。次の第三次産業革命もアメリカが勝利し、コンピューターでの全盛期を通して、産業の構造が変わりました。 2連勝をおさめたアメリカの繁栄は説明する必要がありません。そして、現在は第四次産業革命が起こりつつあると言われていて、IoTによりあらゆるものがインターネットに接続され、様々なデータと技術がつながると言われています。

そこにAI技術が加わってくるといわゆる工場の自律化となるのです。総務省による調査ではその革命の恩恵を受ける1番近い国は、アメリカと日本だと言われていました。ところが現状、日本は非常に出遅れています。私が危惧しているのは、日本という国がもし、ものづくりという領域における輝きを失ってしまった場合、日本に残るものは何があるのだろうかと考えるからです。

だからこそ、第四次産業革命のバトンを中国やドイツといったライバル国に渡してはいけないと感じています。世界の優秀な学生がどんな産業を目指すかと思案し留学先を検討した場合、金融ならイギリス、ITならアメリカ、ものづくりのエンジニアなら日本の「スマートファクトリー大学」に留学したいと考えてくれれば最高ですね。特にASEANの優秀な学生、エンジニアの卵が多く来てくれる事により、卒業生達のつながりがグローバル経済においてより良い循環を起こしてくれると私は確信しています。