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Interview

時代錯誤な派遣差別はもういらない。
物流業界の革命児から学ぶ「50/50」のビジネス論理。

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今、数々のTV や雑誌に注目される企業がある。
2010 年の創業以来、物流業界の派遣ビジネスで劇的な成長を遂げ、今や物流だけではなく、教育の現場、海外事業にまでその幅を広げる企業、株式会社プロテックホールディングスだ。
「13 年ぐらい前はポケットに50 円しかなく、ジュースすら飲めなかった」と冗談まじりに話す秋田代表。
その飾らない人柄と話にみるみる引き込まれた。代表のビジネス論理とは?話を伺ってみた。

起業に至るまでは、大変ご苦労されたようですね。実家の石材業から始まり、ジュエリー販売会社などを経て、大手リフォーム会社に勤務、支店長にまで昇進されますが、業務悪化によって倒産。そこで、大手人材派遣会社で仕事を始めますが、そこでも倒産が続き、当時の派遣会社時代の部下数名と共に、大変なご苦労をされたと伺いましたが。

そうですね。その部下やスタッフは現在も一緒にいますよ。2 年間ぐらい部下達と共に3 社ほど渡り歩きました。

その経験から、起業され、現在の業種に至ったのですか?

派遣って、どこへ行っても“派遣だから”と言われてしまう傾向にありますよね。そして、派遣で働く側も“派遣だから”と言ってしまう。

私は、そのような“頭の硬い”考え方が嫌でした。同じ仕事をしていて、面倒くさい仕事も沢山こなしているのに、そこには人を見下すような差別意識がありました。その事がきっかけとなり、起業するに至りました。

確かに、派遣格差は問題になっています。現在、御社の派遣先ではいかがでしょうか?

先日、弊社のお客様から頂いたお話ですが「実際に派遣を使ってみると優秀な人材がいて、自社の正社員よりも良い人材がいる。そういう人材をこれからは引き上げて行かなければいけないね」と言って頂けました。そういった企業様であれば、弊社も一生懸命働く事ができます。

仕事は、良いものにしていくなら、たとえ相手がお客様であっても、その立ち位置は「50/50 フィフティー・フィフティー」でなければいけないと思います。ですので、弊社では、オーダーを3 社頂いても、結果2 社ぐらいは、お断りしているような状況になっております。

企業は人なり。企業を形作っているものはやはり人ですよね。

まさに人ですね。人材派遣事業をしていると、人がもたない会社には、その会社に何かしら問題があります。弊社では、極力そういう会社の仕事は、お断りしているようにしています。スタッフが可哀想なので。

御社のHP を読んでいますと、社員さんへの代表の想いがひしひしと伝わってくるのですが。

片思いも多いですがね(笑)。どんなに目をかけても、思い通りにはいかない場合も多々ありますよ。とはいえ、あまり目をかけ過ぎるのも良くない。そういう場合は“諦めるしかない”という意見もありますが、それでも、私はそうは思えません。“社員旅行なんてもってのほか!”そりゃそうですよね。1 回行かせれば150 万ぐらいはかかりますから。でもね、いいじゃない、その分利益上げれば(笑)。それに、現在のフィリピンの子会社も、社員がフィリピンを気に入り「こんなところで仕事ができたら幸せです!」と言ったことがきっかけで始まった事業でした。

今後も旅行や食事会など福利厚生は手厚く行っていきたいと思います。

【社員旅行の様子 in マニラ】

【社員旅行の様子 in マニラ】

現在の社員数は?組織をまとめていく上で、ご苦労もあるのではないでしょうか?

派遣スタッフまで入れて300 弱です。本社勤務は十数名です。まだまだ、私も会った事のないスタッフも沢山います。

人材派遣事業に関しては、長くやっている為、皆が皆、阿吽の呼吸で行ってくれていますので、苦労はあまりありません。今後は、海外事業をしっかりと固めていきたいと思っています。

株式上場されるとお聞きしましたが。

そうですね。上場します。弊社の今後の事業継承の事を考えても、また、会社規模も拡大していきたいです。

海外事業についてもう少しお伺い致します。海外で事業となるとご苦労もあるかと思いますが。

大変ですね(笑)。現在、日本語学校の運営、また今後、日本の法律が改正されれば、海外で外国人ドライバーの育成をしていきたいと考えています。どういう事かというと、現在の人材不足を鑑み、日本から古いトラックを持ち込み、右ハンドルの運転から、荷物の詰め方まで指導して、外国人スタッフを日本へ送り出していこうと考えています。

仕事をしていく上で大切にされていることや、座右の銘などがあれば教えてください。

座右の銘などは、ありません。いつも思っていることは、派遣のスタッフが一生懸命働いてくれることに感謝すること。当たり前ではありますが、マネージャーであったり、自分であったり、そこでパソコンを打ち込んでいる管理職の者も含め、スタッフ全員が働いてくれているから収益が出て、我々が会社を運営していける。感謝の気持ちを常に持つ事が、とても大切だと思っています。

そして、そのスタッフの背後には、妻や小さなお子さんがいる者、ご両親の面倒をみている者など、様々な人生があります。我々の役目は、安心してみんなが幸せに生活できるようにしていくことですね。

人生設計も、しっかりできる環境があるのですね。急成長される理由が見えた気がします。しかし、物流業界は保守的な、なかなか雇用改革されない無法地帯なイメージが正直あるのですが、代表の目からみていかがでしょうか?

やはり、格差や人材確保など様々な問題がありますね。流通業界は、まずは規模的にみて、大手企業であればトラック2,000 台から3,000 台、逆にそれこそ家族経営で、トラック5 台ぐらいでやっている方も多くおられます。規模的に小さな企業では、たとえ運賃が安くても、仕事を選べない状況の企業もあり、運賃や労働賃金の足並みを揃えることは、正直難しい状況です。

近頃は“働き方改革”などの取り組みが重要視されており、労働時間の見直しもしなければならないのでしょうが、業界的にみると実施は非常に難しい状況です。人材確保の問題も、ここ3 年深刻な状況です。おそらく、この2・3年の内には、外国人ドライバーが増えるのではないでしょうか。そこで、弊社でも、外国人ドライバー育成事業に力を注いでいきます。

また、弊社では安すぎる賃金のものは引き受けません。そうなると、当然、スタッフに高い給料を支払うことは、出来なくなりますので。

よく北関東の賃金格差の話を耳にしますが、それについては如何でしょうか?

弊社では、ありません。東京と岩手でも支払う給料は同じです。弊社は、全国ネットのお客様が多く、全て一律でお願いしています。ですので、北関東や仙台、福島、岩手などからみれば、弊社の給料額は比較的に高いかと思います。

東海や九州、関西への進出予定は?

ニーズはありますが、まずは現在まで築いた部分を、点から線へ、線から面へというように、しっかりと固めていきたいと考えています。確かに、関西などは賃金が安いと聞きますよね。とにかく発注側の意見が強い。でもね、「料金何とか安くしろよ!はいはい、おっしゃる通りに。」という流れを作ってしまったら、後は悪い結果しかない。売上高を上げるのも重要ですが、どう利益を上げるかが大切だと思います。

単純に考えれば値段を上げれば利益は上がりますよね。最近はだいぶ値上げする企業も増えてきているようです。

ー昨今、新聞記事などでも、何かと外国人技能実習生の話題が取り上げられていますが。

弊社でも、韓国、香港、カナダ、アメリカ、ドイツなどに人材を派遣していますが、韓国などは特に考えが進んでいますね。正直、日本は遅すぎる印象です。

以前、国会でも問題になっていましたが、実習生って“最低賃金で使える安い労働力”って考えがあるじゃないですか。まさしく、これって派遣に対する考えと同じですよね。なぜかと言うと、カナダに介護実習生で行けば一月30 万、初任給でも貰えます。3 年間働けば永住権が貰えて、5 年間働けば家族を呼んで、その家族も永住権を取得できる。それも、増加していく高齢者の為、介護する者を行政で積極的に活性化させて増やしていますよね。

有難うございました。最後に、今後の目標や計画などあればお聞かせください。

企業を10 年、20 年、30 年存続させるのは、大変ですよね。何よりも、まずは存続していくこと。現在、弊社で働いてくれている人材が、未来に夢を持って働ける環境を作っていかなければいけない、それこそが、重要ですね。